口内細菌とがん転移

2023-01-29

口内細菌とがん転移がんと診断された人にとって最も恐ろしい言葉は「転移」だと思います。
がん細胞が原発部位を離れて人体の別の場所へ移動する転移は、がんによる死亡例の90%で見られます。最近、この過程に関与している意外な要因が浮上したそうです。

フソバクテリウム・ヌクレアタムというありふれた細菌は、通常は何の害も及ぼさずに歯茎にすみ着いているのですが、一部の大腸がんや食道がん、膠臓がん、そしておそらくは乳がんについても、転移を助けているらしいそうです。
日経サイエンス社から2022年12月20日に出版された「こころとからだの健康読本」という本に書いてありました。本書は月刊誌「日経サイエンス」に連載中の人気コラム「ヘルス・トピックス」の記事を主体にした健康科学のアンソロジーです。

フソバクテリウム・ヌクレアタムという細菌が血流に乗って移動し、がん細胞の表面に存在する糖の分子に結合して感染しうることが、実験と実際の患者を調べた研究で示されています。
感染すると、がん細胞に移動を引き起こすことが知られている様々な信号と免疫応答が生じます。がんの進行にマイクロバイオーム(微生物叢)が及ぼす影響は注目の研究分野であり、フソバクテリウムの研究はそこに新たな理解を加えるだろうということです。また、斬新な治療法に道を開くかもしれないとも言われています。

この菌は、健康な人の口のなかでは、口内微生物社会の一員としておとなしく暮らしています。
だが歯科衛生が行き届かず糖尿病その他の疾患を放置していると、素行不良となって歯周炎や扁桃炎、虫垂炎、さらには早産を引き起こすのだそうです。

結腸直腸がんとの関連が初めて浮上したのは約9年前、この菌のDNAが大腸がん組織に通常よりも多く存在することを2つの研究チームが発見したことによります。
その後、がん細胞へのこの菌の感染が厄介事であることが数十件の研究で判明しました。膵臓がんと食道がん、大腸がんの予後の悪さと関連づけられているほか、


口内細菌とがん転移食道がんと大腸がんについては抗がん剤治療が効きにくくなり、大腸がんの転移とも関連が見られるとのことです。大腸がんは世界で3番目に多いがんで、死亡数では2番目です。

「フソバクテリウムはがんの原因ではないが、その進行を加速しうると考えられる」とイスラエルにあるヘブライ大学の微生物学者バクラック先生はいっています。

配信 Willmake143

date: 2023/01/ 1:00am

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