いのちの講義

2022-01-24

いのちの講義婦人画報2022年2月号に、東京大学医学部附属病院放射線科特任教授の中川恵一先生の「いのちの講義」が載っていました。テーマは「がんもコロナもそのリスクをどう捉えるかが試されている」です。


いのちの講義この地球のすべての地域が巻き込まれた、新型コロナウイルス感染症という災禍。
それは、それぞれの国の民族性を映し出すリトマス試験紙なのかもしれません。
「そういう側面は確かにあると思います。そして、今回、日本人がこのようにリスクの軽重を判断できなかったことの根本に、ヘルスリテラシーが非常に低い、という問題があることも指摘したいですね」と語っています。

近年耳にするようになったヘルスリテラシーという言葉。医療やヘルスケアに関する情報を正しく選び取り、自らの健康に生かしていく力を指しています。
「日本は先進国のはずですが、ヘルスリテラシーの国際比較調査では、なんと最下位です。
途上国であるミャンマーにも負けてしまっている。ヘルスリテラシーが低い人ほど健診や予防接種を受けず、体の不調にも気づきにくい。結果的に死亡率が高いことも判明しています。

たとえば、乳がん。自分で胸を触ってしこりがないかを探すセルフチェックの有効性は、多くの女性が認識しています。
ところが実際に行っている人は1割未満。自治体から乳がん検診の案内も届いているはずですが、受診率は4割にとどまっています。
欧米では8割の女性が受診しているのに。がんを早期に発見するためには、2年に1度、必ず健診を受けるべきです。
だからといって高価な人問ドックに入る必要はありません。日本の健診制度は世界に誇れるもので、要は、しっかりとエビデンスのある検査には、国がお金を出しましょうという考え方。
ところが、無料やら1000円やらで受けられる検査なんて、どうせ大したことないだろうと思っている人が非常に多い。事実はまったく逆で、“最新”を謳う検査はエビデンスが十分ではないから、国が補助しないのです。
こんなところにも、日本人のヘルスリテラシーの低さが表れています」と中川先生は述べていて、最後にこう続きます。

「結局コロナウイルスは、よくも悪くも私たちの社会のありのままの姿をむき出しにしました。
そうして見えたものを、どう自覚し、変えるべき部分を変えていくのか。そのことをいまこそ考える時でしょう。
たとえこのウイルスが収まっても、数年後には次の危機、新たな“新型ウイルス”がやって来るかもしれないのですから。
そして僕は、このコロナ禍にもよいことはあったと思っています。それは、デジタル化と都市化が進行して生死の実感が乏しい時代に、日本人が死を思い出したこと。
死を意識することは、決して悪いことではありません。いまこの瞬問にも、私たちの肉体は老化し、死に向かっている。だからこそいまを大切に生きなければいけない。この災禍はそのことを日本人に教えているのだと思います」。

配信 Willmake143

Copyright© 2010 ARAKI DENTAL CLINIC, All Rights Reserved.